非日常やアブノーマルや異形の世界に憧れて、
接近してみたくなるのは、自分の平凡な日常に自信を
持てない個の揺らいだ大衆だからだ。
殺人者が書いた経験談は、いくら文章を修飾しても、
ドキュメントとしてしか読めないのであって、
創作者は殺人者本人にも気づかないほどの殺人者の
心理を描かねば面白くならない。
本物の創作者は非日常の世界に生きていない。
まるで宗教者のようなストイックな世界に生きている
者こそ、最も遠い非日常まで飛距離を伸ばすことが
できる。
世界は陰陽で成り立っていて、陰の世界に光を当て
てはいけない。
最近では、陰の世界の住民が光を欲するし、陽の世界
の住民も光を当てるべきだと主張する。
かくして陰陽の区別がつかない薄明るい世界が
どこまでも拡がって、正義と悪の差も、安全と危険の
差も察知できない人間が増殖していく。
非日常もアブノーマルも異形も、全部自分の内部に
あることに、気づかせるために、わしはギャグ漫画を
描いている。